4-1.再建計画はどこを見ればイイの?~再建計画のチェックポイント~

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再建計画策定
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再建計画のチェックポイントは解説してきましたが、今までのは経営不振企業が作成した荒い計画にすぎません。ここからが再建計画チェックの「本番」です。

金融機関の融資担当者は銀行内の審査部にこの経営不振企業は再生の可能性があるということを説得しなくてはいけません。そのためよりシビアな視点で再建計画をチェックする必要があります。

ここで「再生計画」は金融機関に妥当性を見てもらうまでの計画で、その中で「作成~チェック」を何度も繰り替えすことになります。その後、本気で再生する経営計画ができあがります。それが、「再建計画」となります。

この記事では総合的に再生計画を審査する方法を解説していきます。

再建計画の留意点

再建計画の目的は債務者区分の上位遷移、正常先へのランクアップにある。この条件をクリアするべき計画でなければなりません。また、実現可能性の高い抜本的経営改善計画でなければなりません。この両方を実現していく必要があります。

実現可能性の高い計画とは

①計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。
②計画における債権放棄などの支援の岳が確定しており、当該計画を超える追加的な支援を見込まないこと。
③計画における売上高、費用、利益等の想定が十分厳しいものとなっていること。

抜本的な計画とは

①おおむね3年後に債務者の債務者区分が正常先となること。
②各金融機関の取引の総合的な換算を勘案して貸出金に対して基準金利と同等が利回りが確保されていること。

再建計画表の策定・・・通常5年ないし10年の長期計画を作成することになります。
・事業別、店舗別、単独事業の場合には製品、商品の分野別計画わ策定する→集計・総合し全体計画となります。

再生達成の条件

原則 ①債務超過解消年数が3年程度
②債務償還年数(有利子負債÷(営業利益+減価償却費))が10年以内であること

再建計画の妥当性判断

①再建計画の方向やビジョンが明確になっていること
②徹底した財務面のリストラが検討された計画であること
③計画策定の諸条件、超えるべきハードルの高さが現実的な範囲にあること
④計画数値には一定のストレスがかかり、リスクシナリオ、コンティジェンシープランがあること
⑤社内の意識改革のポイントが明確であり、コーポレートガバナンスが十分であること
⑥金融機関の支援がコミットされていること

企業再建スキームの検討

続いて企業再生スキームを検討します。簡単に言うとどの法律を適用して事業再生を図っていくかを決めていくということです。大事なことは、どのスキームを適用するかで税務上で受ける恩恵に違いがあるということです。

法的整理 会社更生法、民事再生法の整理手続きは、法定整理の下に財務リストラを促進し早期の再生を目指す方法
私的整理 法律の規定によらず、裁判所が関与せず債権者と債務者が話し合いで行う整理手続き
・一定の私的整理の対象となるのはほんの一握りで大多数は対象外
経営改善型自主再建 正常な企業の取り扱いと一部を除いてかわらない

法的整理と私的整理の税務上の取り扱い

通常の青色欠損金、災害損失金の繰越控除の他に、特例欠損金の損金算入、資産の評価損益の認容等の特例を活用できる企業は、債務免除益課税を回避しながら負債を圧縮して、弁済可能な債務額となり債務超過企業から強制力をもって脱出できる。

会社更生法 民事再生法 一定の私的整理(私的整理ガイドライン、RCCスキーム、中小企業再生支援協議会スキーム) 経営改善自主再建
繰越欠損金 〇損金算入 〇損金算入 〇損金算入 〇損金算入
特例欠損金(期限切れ繰越欠損金) 〇優先的に損金算入 〇優先的に損金算入 〇優先的に損金算入 △合理性のある私的整理であれば損金算入(法基通12-3-1)
資産の評価益 〇益金算入 〇益金算入 〇益金算入 ×益金不算入
資産の評価損 〇損金算入 〇損金算入 〇損金算入 ×損金不算入
債権放棄額の損金算入 〇損金算入 〇損金算入 〇損金算入
債務免除益と相殺する順番 ①特例欠損金 ①資産評価損 ①資産評価損 ①繰越欠損金
②資産評価損 ②特例欠損金 ②特例欠損金
③繰越欠損金 ③繰越欠損金 ③繰越欠損金

※法基通=法人税法基本通達

一定の私的整理

一定の私的整理は中小企業再生支援協議会スキーム、RCCスキーム、私的整理ガイドラインなど厳格な債務処理基準を持つ私的整理のこと

特例欠損金の損金算入

民事再生法、一定の私的整理においては評価損益が計上される場合は、債務免除益等から期限切れ繰越欠損金部分を青色欠損金に先立ち優先控除する。評価損益が計上されない場合は青色欠損金を優先控除する。

評価損益の計上方法

別表添付方式の場合は、債務免除益と相殺すべき損失として特例欠損金を優先控除し、次の青色欠損金を控除する。
・損金経理方式の場合は、青色欠損金を優先し、次に特例欠損金を控除する。
・一定の私的整理でも、別表添付方式による資産の評価損益の計上が可能になるため、上記の債務免除益との相殺においては民事再生法にて準じた順番で控除できると考えられる。

再建計画のモニタリング

①業績達成状況確認(事業収支、得意先別、事業部門別、営業所別等の採算管理)、管理会計の実施
②改善計画の進捗状況
③月次資金繰り状況の把握
④金融機関を含む各ステークホルダーの支援状況確認
⑤経営者・従業員を含めた社内のモチベーション維持の状況

再生計画のモニタリングは経営不振企業が月次で行います。金融機関はその予実分析結果と来月以降の施策をモニタリングしていくことになります。当然、経営不振企業に予実分析が行える人材が確保できていることもモニタリングの範疇になります。

再建計画の受検時の感想

上記で解説した「再建計画」は試験ではいわば総合問題ともいえます。リストラも終わり、これから本格的に会社の再建に入っていく訳ですが、事業再生アドバイザー認定試験の勉強をしていてここが一番面白い部分であり、実用的な部分です。

私の受検時の感想ですが、試験の問題の出方は税務の細々とした質問よりも、スキームの違いについてが多く出題されました。特に中小企業は会社更生法や民事再生法の適用されることはほぼなく、「一定の私的整理」を適用させて税務面のメリットを享受しつつ再生を図っていく場合はほとんどです。それが試験にも反映されているという感じですね。

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