事業再生において、コスト削減が必要になります。コスト削減は「リストラ」と言われますが、このリストラは再編型と合理化型の大きく2つに分けられます。
この記事ではリストラの種類について解説していきます。
リストラは再編型と合理化型の2種類
再編型のリストラ
再編型のリストラは、複雑多様化した企業の縺れをときほぐし再編成を行うことによって経営全般が活性化し再構築が果たせるという考え方で実施するものです。
財務リストラ(BSの再編)
貸借対照表の縮小健全化を実行します。いわば、縺れの原因を突き止め一つ一つほぐしていく作業で、中身の濃い企業への脱皮を図るということです。
流動資産のスリム化
粉飾・逆粉飾決算
企業会計原則では費用は発生主義、収益は実現主義を採用しています。売上であれば販売又は役務の給付が完了した時点で「売掛金/売上」として計上されます。
→現金回収に至らなくても売上計上は可能なので架空在庫、架空請求の計上ができるので注意
与信管理・債権管理
①与信管理・・・最低限新規取引先にか関しては会社登記等謄本を提出させる。相手方に出向いて会社の状況を見たり、経営者、経営幹部と面談したり関係者からヒアリングを行ったりという一般的調査は行っておきます。
②債権管理・・・各売掛金ごとに回収可能性を評価しランク付けをします。次に未回収原因を調査し回収作業に入ります。
・債権種類別の時効時間確認、内容証明郵便の送付、支払督促、民事訴訟等々の手段はあるが費用対効果の観点から有効とは言えません。
③在庫管理・・・実地棚卸データを精査し不良在庫と思われる商品を除外もしくは廉価であっても売却できる方法を検討します。
・仕入調整等の入口時点での措置が必要です(在庫管理の主題は在庫品の処分よりもぬ不良在庫発生を防ぐ措置)。
④仮払金等・・・仮払金、未収金、前渡金、立替金、仮受金、未払金、前受金、預り金は使途不明金の存在に繋がる場合もあるので綿密な調査が必要です。
固定資産のスリム化
不動産の評価方法・・・事業継続上必要な固定資産に関しては、適正な減価償却を実施し、また、適正な減損処理を実施した上で、帳簿価格をもってその価値を認識するとともに、換価可能価格を把握しておくことが必要です。
資産の流動化・・・リストラの必要な資産について第三者売却を意思決定することが難しい場合には、SPCもしくはSPVを活用したオフバランスが有効です。
事業リストラ(PLの再編)
事業別、部門別、店舗別等々の貢献度、将来性、シナジー効果等を検討し選択と集中の経営判断を行います。これにより、損益計算書の再編→事業の選択と集中→売上主義から利益主義への脱皮を図ります。
事業の評価
事業の評価は、各事業部門の評価に管理会計を導入して実績を厳しく問うことになります。各事業部門の部門長に権限を与えるこことで売上目標だけでなく利益目標にも責任を持ってもらうことが目的です。
既存事業部門・・・各事業の収益状況を中心に評価する利益に関しては、この事業部門が将来に渡り生み出すキャッシュフローの現在価値を算出します。事業としてライフサイクルのどの段階にあるか、成熟段階か、成長段階かなとを検討します。
新規事業部門・・・投資が生み出す収益を評価します。開発段階で製品化に向けてそれ以上進まないもの、事業として既に動いているが採算が悪いものなどを中心に見直し評価します。
事業整理のチェック項目
事業の整理の具体的なチェック方法は以下の表にまとめました。
収益性 | 事業としての収益性を限界利益、管理可能李沖、事業部利益などを金額、比率により期間比較、競合比較を行う ・管理会計では管理可能利益が赤字、財務会計では営業利益が赤字であり、将来性・成長性が期待できないのであればその事業部門からの撤退も検討する。 |
成長性 | 売上・限界利益などの利益に関して前期伸び率、過去5年間の伸び率の推移などを算定する。 ・売上高伸び率がマイナスであればその原因が外部要因か内部要因かなどを検証する。業界動向、競合同行を調査、研究する。 |
安全性 | 事業部別にインタレストカバレッジレシオ、外部負債比率を算定する。 ・支払能力を見る。累積赤字の場合は慎重に安全性を判断する。 |
市場でのポジション | 市場でのシェアランキング、市場の範囲、新市場などの可能性を分析する。 ・過去5年ないし10年間のシェア・ランキングの推移を見る |
価格競争力 | 国内市場での価格競争力、海外での価格競争などを分析、把握する。 ・価格競争力がない場合、コスト削減等による価格引下げの余地の有無の検証を行う |
商品・製品 | 商品・製品・サービスなどは競合他社と比べ質的に優位にあるか、顧客から高い評価を受けているかなどを検証する。 ・納期、サービス、応対、アフタサービスなど総合的に競合他社と比較する。顧客満足、効率性は事業別に判断する。 |
技術・事業撤退より失われる技術 | ・コア事業の弱体化を招くようであれば残すことも考えなければならない。 |
他の事業との関連性 | 事業が完全に独立しているわけではなく、他の事業部門に影響が出る場合、その影響度を測定する。 ・ある部品を製作しその部品を他部門が社内調達している場合、撤退することにより原価に影響が出てくるこれを算定する。 |
シナジー効果への影響 | 生産、営業、顧客などに関し、シナジー効果がある場合には、事業の撤退により、他の事業、企業全体としてどの程度影響が出てくるか測定する。 |
事業縮小、撤退の清算価値 | 縮小・撤退するとなった場合、投下経営環境の減少、引き揚げが発生することがこれを具体的に見積もることが必要 ・事業部が使用していた資産についても、売却などをして売却益がでるか、売却損が発生するのかといったことを検証する。 |
事業整理の判断
①スコアリング・・・事業整理のための各チェック項目につき、スコアリングにて事業の縮小・撤退を判断する。
②委員会・・・客観的な判断が下せる委員会を作り、委員長には社長がなる。
③トップの決断力・・・トップの決断で決める。
→事業リストラは社長自身の責任者の自覚を促す効果もあります。
合理化型のリストラ
合理化型のリストラは、キャッシュフローも含めた営業利益の拡大を目的として実施するものです。
売上高・売上原価の見直し
マーケティング・顧客管理等々の売上高の増大を目指し、製造業では工程管理や人員の再配置、非製造業では仕入先・仕入価格の見直しで売上原価の減少を図ります。
業務リストラ
全ての経費に対して何のための支出なのか、どのようなリターンが期待できるのかということを徹底的に解明することになります。営業利益の拡大=健全に稼げる企業への脱皮を図ることが目的です。
変動費・固定費の峻別
ここでの損益計算書は税務申告のためのものではなく、あくまでも経営分析の指標としての情報を得るための手段として作成します。企業全体の流れを俯瞰的に把握していくことが重要です。
販売費・一般管理費の再分類
減価償却費等のキャッシュアウトを伴わない経費と役員報酬等の業績に直接関連性のない経費です。
・役員報酬は必ず何らかの減額措置を講じなければならない。→関係者、従業員がついてこなくなる
・費用対効果の高い人件費は設備投資と考えるべき。
顧客別損益計算書・・・商品別損益計算書を作成し、主要な顧客ごとの取引バランスが崩れているかを視覚的に捉えることができるので有効です。
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