再生計画は経営不振企業が作成することになりますが、経営不振企業が作成した決算は粉飾決算が行われているケースが少なくありません。
では、金融機関は再生計画をどうやって審査していくのでしょうか。このページでは金融機関から見た再生計画の定量分析について解説していきます。
再生計画の定量分析
審査のポイント① 売上高の計画
審査する再生計画は、売上高増加に過度に依存しない計画となっていることが必要です。直近の足元実績と前年の実績を見て、場合によっては下降傾向で計量するくらいの思い切ったものが望ましいとされています。
具体的には・・・
商品ごとあるいは部門ごとにマーケット全体の量とシェア、市場・顧客軸での売上の構造展開、あるいは直近の売上実績に過去年間のトレンドを噛み合わせ、低めで前年を下回るような掛け目をかけて設定する方法が推奨されています。
再生計画において爆発的に売上が上がる計画が立てるとするならば、既に売買契約が結ばれている等それなりの信憑性がある証拠が必要になってきます。金融機関が信じるに足る証拠が無い場合は、上記のように前年の売上高が減少していくような控えめな数値で計画を立てていくことになります。
審査のポイント➁ コスト削減計画
再生計画は売上だけでなく、コスト(売上原価、販売費及び一般管理費)の計画も必要です。コスト削減は「聖域」を設けない短期的、中長期的なコスト削減が重要となってきます。コスト削減計画では以下の点をチェックしていきます。
ポイント
1.事業環境の変化を織り込んで販売計画と整合性がとれているか。
2.楽観的なコストダウン計画になっていないか。
3.改善効果実現の時間軸を考慮しているか。
4.オペレーション、業務改善は徹底的にやり尽くされているか。
5.取引先のバリューチェーンのなかでコアになる機能は何なのかそしてそれに即した費用原価の特徴は何か。
審査のポイント③ PDCAサイクル
PDCAサイクルは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念です。月次で再生計画対比実現の推移をチェックしていきます。
このチェックは経営不振企業自体が月次で再生計画と実績を管理していく体制が整えられているかという点もポイントになります。
審査のポイント④ 資金繰りと資金の流れの確認
再生計画は売上高とコストを月次で表したものです。これを資金繰りに落とし込んだ場合、実現可能なのかといった点で確認していきます。再生計画には金融機関からの追加融資が必要となる場合もあります。追加融資しても最終的にはその元本、利息が回収できる計画になっている必要があります。
資金運用表での資金の流れの分析
赤字決算となった決算期に約定返済分の再融資が実行されていたり、運転資金が融資されている場合、その資金が赤字資金に転用されている可能性が高い。それを確認するるために実績ベースでの資金運用表を作成してと当該期の資金の流れを確認します。
→収益以上の返済がなされているのであれば約定返済分の再生融資は必要。収益が上がっていなくても減価償却費が大きく再投資が少なければ返済は可能と判断します。
再建計画と資金繰りの整合性
・経営再建のために行った貸出条件緩和、返済猶予を実行すれば資金面に余裕が出ます。一見すると返済可能な状況に見受けられますが、年間トータルランの現預金の積み上がり状況を確認してみれば、返済が可能なのか難しいのか確認できます。
・返済を猶予している中、余計な設備に投資していないか投資項目をチェックします。返済を判別している中での資金流出は必ず使途をチェックします。
審査のポイント⑤ 返済シェアの確認
貸出条件緩和、返済猶予等の金融支援により返済を一時停止した後の返済計画は、当面は限られた収益の中から可能な営業収支、資金繰りに余裕もった範囲で返済を進め、少なくとも3~5年の範囲で収益力を改善でき、債務償還年数体力を15年以上に回復させ返済条件もその範囲内で組みなおすことになります。
・正常時は各金融機関毎の保全率や取引開始時期によりまちまちであった返済条件を一律の返済期限に流し込むことになるのでプロラタ返済を行うことになります。
プロラタとは・・・
プロラタ返済には貸出残高に応じた返済シェアのことです。貸出残高に応じたシェア割を残高プロラタ、信用残型に応じたシェア割を信用残高または未保全プロラタ、残高プロラタと信用残高プロラタを組み合わせたシェア割の3つが一般的とされています。
定量分析の手順
①過去3年間~5年間の比較B/S、比較P/Lを作成し、各科目の推移を掴むと同時に金額が突出した科目についてはその原因を分析する。
②各科目の増減など整合性に留意する。売上前値年と比べて減少しているのであれば、売掛金も同じように減少しているか、また棚卸資産の在庫につても売上減少に応じて在庫金額が圧縮されているかどうの検討を行う。同様に負債項目についても売上減少に伴い仕入原価減少、買掛金残高が減少しているかを確認しし、異常があれば抽出する。
③調査時点の月次試算表を基に主要勘定科目についての残高を確定する。
④複数業種、多店補有する企業については部門別数値を把握する必要がある。
この部門別数値の洗い出しを行うことにより、財務リストラ、業務リストラ、事業リストラ等の方向性を検討する手がかりとなります。
⑤各項目について、必要に応じて、商標突合、現物確認などを行い、また質問や勘定分析などによって、全額の妥当性を検証する。
⑥最終的に再生可能性を判断するには粉飾だけでなく、簿価と時価が異なる項目について時価評価することによって調査時点の時価B/Sを作成する。
これは経営不振企業が作った再生計画をまずは実態B/S、実態P/Lを修正するということになります。現金ベースで経営不振企業が再生でき、金融機関が融資した資金が回収できるかを見ているということです。
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