新たな成長戦略を明確にした上で最終的には、再編成されたコア事業を中心に安定したキャッシュフローが創出できる事業構造になり得るかどうかを見ていくことになります。新たなビジネスモデルを描けるかどうかが重要です。
このページでは金融機関から見た再生計画の審査について解説していきます。
定性分析の三つの柱
経営者・ファミリー
事業再生・企業再建にとって当事者が再生を担える資質と能力を保有しているか、親族・縁戚関係者が経営に参加し、株主としても一定の所有を行っていることから、事業再生を進めるにあたり、これらの問題をどのように考え対処していくかは、避けては通れない問題です。
経営者の資質と能力に係るチェックリスト
評価項目 | 要な内容 |
経営に対する基本姿勢 | 経営責任の自覚、私財活動に関する決断、同族に対する厳しさ |
再生戦略を構想する能力 | 危機に対する認識、戦略ドメイン、自社のポジショニング、顧客ニーズの把握、競合他社の戦略把握、コアコンピタンスの認識 |
経営革新に対する姿勢 | ビジネスモデルの転換、業務改革、人事制度の革新、新商品技術開発、システム革新 |
後継者、同族役員の能力 | 後継者の有無、後継者のリーダーシップ、同族役員の社内評価 |
意思決定スピードと実行力 | 意思決定スピード、転換の見極め、迅速な実行力 |
選択と集中戦略の展開可能性分析
事業再生にあたってのコアコンピタンスを明確にすること。そしてコア事業を選択し、ここに経営資源を集中的に投下することによって競争力の回復を図ります。不採算事業からは思い切って撤退する決断が必要です。
事業戦略の展開可能性分析
危機の要因を外部経営環境の変化との関係で具体的に把握することを通じて、事業再生戦略の展開可能性を判断する。
再生可能性判断の具体的な展開方法
基本戦略は「選択と集中」です。どの事業を残し、どの事業を撤退ないし縮小するかを決めることが必要です。
相対的に勝ち目のある領域、相対的に競争を有利に選べる領域に経営資源を集中的に投下していくという考え方を戦略的セグメンテーションと言います。
SWOT分析
外部経営環境を機会(有利)と脅威(不利)を全体として把握、自社経営資源分析を通じて、その強み、弱みを整理し特にコアピタンス(中核的能力)を明確するすることを目的にした分析手法。
マクロ環境分析(PEST分析)
業界の収益機会に大きな影響を及ぼす要因を政治的要因、経済的要因、社会的要因、技術的要因に分けて分析しそれらの要因の推移にり業界の収益機会を特定する。
分析事項 | 分析事項の例 | |
政治的環境要因 | 法規制、税制 判例、政府等の動向 |
酒類規制、食品安全規制 公正取引政策 |
経済的環境要因 | 景気・価格変動 為替、金利 |
デフレの進行、地価・賃料水準 物流コスト |
社会的環境要因 | 人口動態、世論・社会的主義 教育レベル、環境 |
商圏内人口、男女別・年齢別人口 自然健康志向、食品安全・衛生に関する問題 |
技術的環境要因(※) | 技術革新 特許 |
IT技術の進化 インターネットの普及、ICタグの進化 |
※.自社が開発する技術という視点ではく業界内において活用できる技術という視点から分析します。
ミクロ環境分析(5Force分析)
事業の関係者(競合他社、供給業者、買い手、潜在的な参入業者、代替品提供業者)5社の影響力を分析するもの。
業者間の競争 | ・市場の成長性はでの程度か ・製品の差別性はあるか ・見えないカルテル等が事業にあるか ・業界の生産能力は過剰ではないか ・切替コストが高いか低いか ・価格規制があるか |
供給業者の交渉力 | ・供給品に差別性はあるか ・供給品の切替コストは高いか低いか ・供給品の代替品はあるか ・供給業者集中度は大きいか ・供給業者にとっての販売量は多いか少ないか ・差別化・低コストにとっての供給品の需要度はどの程度か |
買い手の交渉力 | ・買い手は差別性を求めるか ・買い手の集中度が大きいか ・買い手にとって切替コストが高いか低いか ・買い手の情報量は豊富化 ・買い手にとっての代替品はあるか |
新規参入の脅威 | ・スケールメリットは大きいか ・既存製品の差別性が際立っているか ・切替コストが高いか ・初期投資規模が大きいか ・経験曲線効果の度合いが大きい業界か ・正規の規制が強いか ・技術障壁は高いか |
代替品の脅威 | ・性能と価格で市場の評価はどうか ・切替コストは高いか低いか |
環境の変化に企業の戦略が対応できているかを評価
環境変化への対応の危機
経営不振企業はなぜ経営危機に陥ったのでしょうか。原因が経営環境の変化だとしたら、変化への対応が遅れ、市場の動向について行けず、商品・サービスが市場ニーズにマッチしなくなることで顕在化します。
・現実の市場と乖離した事業を市場に適合するように再編成することによって経営危機期を回避し競争力を回復できるか見定めることができます。多くの場合、外部環境の変化、市場ニーズに応えられていないことが経営危機の原因です。
業務運営構造の危機
環境変化への対応の遅れは減収減益となって顕在化します。このことは、事業を担う、購買、製造、配送、マーケティング、人事、研究開発、設備・財務等の事業運営構造そのものが市場動向に適合しなくなっていることに通じます。
・業務運営構造は事業戦略に対応してその戦略実現のために最も効率的に編成されるべきです。しかし、事業戦略が市場と不適合により顕在化していくに従って、業務構造の効率性は極端に悪化し、損益分岐点比率の上昇となって現れます。
したがって再生可能性判断は、業務運営全般を見直し、最小の投入量(リスク)で最大のアウトプット(リターン)を実現する業務運営構造にへの作り替えができないかを見ていくことになります。つまりビジネスモデルの見直しが出来ているかということです。
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